PROJECT STORY海外事業

グローバルメーカーとして本格的に歩み出した日工。
その重要な足がかりは、ASEAN市場にあった。

グローバルメーカーとして
本格的に歩み出した日工。
その重要な足がかりは、
ASEAN市場にあった。

※内容は取材当時のものです

INTRODUCTION

Word海外事業
1919年の創業以来、世界中でアスファルトプラントの建設に携わってきた日工。その実績はすでに50か国以上・1,000件を超える。その日工がいま、積極的な開拓を進めているのが東南アジアだ。ASEAN市場の一角であるタイにはすでに製造・販売の両拠点を設置。マーケットの特性に応じた新機種や新サービスの開発が行われている。

PROFILE

K.K.
海外事業戦略室
グローバルマーケティングチーム
2021年新卒入社
社会学部 社会学科 卒
N.Y.
NIKKO ASIA (THAIALND) CO., LTD. SALES & MARKETING DIV, General Manager
2008年新卒入社
国際言語学部 国際言語
コミュニケーション学科 卒
S.S.
NIKKO GMT CO., LTD. ENGINNERING DIV, Manager
2017年新卒入社
工学部 機械システム工学科 卒
N.V.P.
プラント開発部 グローバル戦略課
2018年キャリア入社
機械学部 メカトロニクス学科 卒

グローバルメーカーとしての船出。

「世界を、強くやさしい街に。」——日工のビジョンだ。冒頭の「世界」という言葉からもわかるように、日工はいま、グローバルプラントメーカーとして市場を切り拓こうとしている。その中でも有望視されているのがASEAN市場だ。日工は2020年、タイに販売法人と製造法人を設立。それらを“ベースキャンプ”として、ASEAN市場を攻略していくはずだった。

ところが、コロナ禍が襲った。社会と経済が大きく混乱する中で、プラント業界にも想定外の動きがあった。中国のプラントメーカーが、次々にタイへと進出を始めたのだ。

これに頭を抱えたのが、タイの販売拠点にいたN.Y.だ。もともとタイは、導入コストが重要視される市場。日工のプラントはクオリティこそ抜群だが、導入コストもかかる。それゆえに競争力不足が懸念されていたのだが、そのうえ中国メーカーまで押し寄せれば苦戦は目に見えている。迎え撃つための準備を、早急に整えなければ。

N.Y.には、駐在中に収集したリアルな市場の情報があった。その情報を分析し、戦略化したのがK.K.だ。「市場にフィットするASEAN専用モデルを開発すべきだ。とはいえ、『安かろう悪かろう』では意味がない。日工にしかないアドバンテージを盛り込まなければ——」。それがK.K.たちの結論だった。

燃費という、
差別化のエネルギー。

K.K.たちが目をつけたのは、日工製プラントの燃費のよさだった。導入コストだけがコストではない。数十年にわたって稼働するプラントは、運用コストも極めて重要だ。そして燃費がいいほど、運用コストの抑制につながる。ただし、ビジネスでそれをアピールするには客観的な裏付けが必要だ。ここで、N.Y.が築いてきた現地ディーラーとの信頼関係がものを言った。他社のプラントを所有しているユーザーを紹介してもらい、燃費データのリサーチに協力してもらう約束を取り付けたのだ。

アスファルトの製造には、材料の石や砂を乾燥させる「加熱」というプロセスがある。その際、他社製プラントではどれほどの燃料が消費されているかを調べ、日工製との違いを可視化する——それがK.K.たちの狙いだった。問題は、他社製プラントにデータを収集する仕組みがないこと。材料と燃料、それぞれの重量を人力で測るしかない。K.K.たちは、まだ夜も明けないうちから紹介されたプラントを訪れ、計測に取り組んだ。体はくたくたになったが、得られたデータがその疲れを吹き飛ばしてくれた。日工プラントの圧倒的な優位性を示していたのだ。ASEAN市場の攻略に向けて、心強い武器が手に入った。

ASEANモデルに挑む。

設計チームもまた、燃費とは別の武器を生み出すための仕事を始めていた。従来の製品より販売価格を抑えた、ASEAN専用モデルの設計だ。それを担ったのがN.V.P.。N.V.P.にとって、これが初めての新型プラント設計だった。

価格を下げるには、当然ながら製造コストを下げることが前提になる。N.V.P.はまず、設計基準の見直しに着手した。たとえば耐震基準。日本国内向けのプラントでは、耐震性能のレベルが非常に高く設定されている。ただ、地震リスクが少ないとされるタイではオーバースペックだ。それを適切に調整することで、コストダウンを図る。さらに、仕様を変更した部分についてはテストを繰り返し、計算通りの性能が出ているかどうかを慎重にチェックしていく。

前後して、プラントに使う部品の選定に取りかかったのがS.S.だ。絶対条件は「タイで調達できること」。もちろん、コストや性能も外せない。タイに所在するメーカーに伝手はなかったので、インターネットやコネクションから探り当てたメーカーにコンタクトをとった。日本国内での部品選定は、ディーラーを介してメーカーとやりとりすることがほとんど。だが、今回は時間が限られているうえにディーラーとのコネクションもなく、ほぼすべてをS.S.自身がこなさなければならない。3か月ほどで部品のリストアップにこぎつけたS.S.は、ひと息つく暇もなく、プラントの組立と検査、不具合対応に取りかかる。

一人ひとりが、
世界攻略の力。

2024年9月。ASEAN専用モデル「NAP.ACE」の第1号機が完成。無事に納入された。間を置かずして2号機も。逆境ともいえる状況の中で、まずまずの滑り出しを迎えたことに全員が胸をなでおろした。ちなみに「NAP.ACE」のNAPは日工のアスファルトプラントであることを意味し、「ACE」にはASEAN市場のエースになってほしいという願いが込められている。

覚悟していたことではあったが、初挑戦の連続だった。だからこそ、全員の経験値は間違いなく上がった。K.K.とN.Y.は、ユーザーが多面的にプラントを評価していることを痛感した。性能だけでも、コストだけでもない。付加価値やブランド力、さらには日工という企業の価値そのものまでが問われる。この気づきが、世界での新しい戦い方に繋がっていくはずだ。S.S.は、新市場攻略におけるエンジニアの重要性を再認識した。マネージャーとしてエンジニアたちの力を引き上げ、これからに向けた体制づくりを進めている。N.V.P.は、初めての新プラント設計を通じて鍛えたスキルで、ベトナムやインドネシア市場を見据えた「NAP.ACE」の仕様変更に取り組み始めた。

世界の日工へ。その歩みは一人ひとりの成長とともに、着実に進んでいく。